厚労省難治性疾患克服研究事業

「カルシフィラキシー(Calciphylaxis)の診断・治療に関わる調査・研究」 における、カルシフィラキシーの診断基準作成のための臨床データおよび皮膚病理所見に関する後ろ向き調査への参加の協力のお願い

この文書はカルシフィラキシーの診断基準作成を目的とした厚生労働省難治性疾患克服研究事業、「カルシフィラキシー(Calciphylaxis)の診断・治療に関わる調査・研究」における、カルシフィラキシーの診断基準作成のための臨床データおよび皮膚病理所見に関する後ろ向き調査へのご協力についての説明文書です。内容についてわからないことやお聞きになりたいことがありましたら、遠慮なく担当医または、研究研究代表者にご連絡ください。

1.研究の目的

カルシフィラキシーは、主に、慢性の透析患者さんに合併する病気で、皮膚にできる多発性の大変治りにくい潰瘍を主な症状としています。重症の場合には、皮膚潰瘍に細菌感染を繰り返し、全身的な感染症、例えば敗血症などに発展して、生命に関わる場合が少なくありません。この病気の原因については、腎不全と、それにともなうカルシウムやリンの異常が関係していると言われていますが、明らかになっていません。また、どのような場合にカルシフィラキシーと診断してよいかという基準(診断基準と呼ばれます)が決まっていないために、糖尿病などによる壊疽と混同されている場合も多い可能性が指摘されています。カルシフィラキシーは、これまで、非常に稀な病気とされてきましたが、近年、透析患者さんの増加とともにこの病気にかかる患者さんが増えつつあるとされています。しかし、診断基準もなく、現状がどのようになっているかなどの、全国的な調査も行われたことはないなど、その詳細は不明です。そこで、このような難治性の病気であるカルシフィラキシーを解明して、治療法の開発につなげるために、平成21年度の厚生労働省難治性疾患克服研究事業として、今回の研究、「カルシフィラキシー(Calciphylaxis)の診断・治療に関わる調査・研究」が計画され、現状を調査して、さらに、その診断基準を作ることになりました。

具体的には、これまでにカルシフィラキシーにかかられた患者さんの病歴、血液検査などの臨床検査データ、そして、皮膚の潰瘍から組織を採って検査している場合はその標本の画像データを、登録センター(慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センター)で詳細に検討することにより、この病気の特徴を明らかとして、他の疾患、例えば糖尿病壊疽などとの鑑別を可能にするような診断基準を策定します。そして、その診断基準によりカルシフィラキシーを適確に診断し、将来の治療法開発へと役立てていくことを目的とした研究です。

2.研究に協力しない場合の任意性

この調査に協力しないという意思表示が、あなたが、あるいはあなたが代理人となる方が受診されていた病院の担当医になされた場合には、あなたの、あるいはあなたが代理人となる方の情報は、この研究に用いられません。協力しなかったことにより不利益を受けることは一切ありません。ただし、平成21年11月30日までにご連絡が無い場合は、既に登録センターに送られた画像データ、血液検査などの臨床検査データ、病歴は、個人は勿論、送られた病院も特定できないようにデータを処理して保存しますから、お申し出があっても、特定の個人のデータを削除することはできません。また、皮膚の組織標本が登録センターに送られて画像データが保存されている場合も、平成21年11月30日までにご連絡が無い場合は、同様に取り扱われますので、その後、お申し出があっても特定の個人のデータを削除することはできません。

3.研究方法・研究協力事項

この研究は、この研究への参加が承認された医療機関において過去に診療を受けたカルシフィラキシーの患者さん全てが、対象となります。しかし、非常に稀な病気であることから、全例でも50例未満と想定しています。

具体的にご協力いただく内容は以下の通りとなります。以前、あなた、またはあなたが代理人となる患者さんから皮膚の組織が採られている場合の標本や、解剖にご協力いただいている場合はその時の組織の標本は(注参照)、検査成績とともに、ある一定期間、各病院で厳重に保管されております。この研究への参加を承認された施設から、皮膚の組織標本、または、その画像データが登録センター(慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センター)へ郵送されます。同時に、病歴、血液検査などの臨床検査データ、カルシフィラキシーに対する治療歴が、各病院から登録センターに送られます。これら皮膚の組織標本、種々のデータが登録センターに送られる場合は、個人を特定できる情報は全て省かれた形で送られますが、各病院ではどの患者さんからのデータが送られているか、この時点では調査可能です。平成21年11月30日以降は、登録センターではどの病院から送られた情報であるかを抹消しますので、登録センターでは、個人のデータを特定することは,不可能な状態となります。その後、登録センターにより、組織の所見と臨床情報の関連が詳細に解析されます。これにより、それぞれの皮膚の組織がどのような変化を示し、血液データなどの臨床検査データとはどのように関連したのかを調べることができます。なお、皮膚の組織標本が送られている場合は、画像データとして保存後、再び各病院に返還され以前と同様に厳重に保管されます。

注:皮膚の組織の標本、あるいは解剖で得られた組織は、顕微鏡で詳しく検査するために、既に、加工されて保存されています。このような標本を、病理標本とよびます。この研究では、既にある、この病理標本を用いるのみで、新たに皮膚を一部切り取ったり、保存してある組織を加工し直したりすることは一切行いません。カルシフィラキシーにかかっていらっしゃった時に既に作られているものを、改めて顕微鏡で見て、写真を画像データとして残すだけです。組織自体を、登録センターに保存することもありません。いってみれば、レントゲン写真のコピーを作り保存することと、それほど大きな違いはありません。

4.研究協力者にもたらされる利益および不利益

協力者の利益は当面ないと考えています。不利益については、データは全て個人情報が削除されることから、個人情報漏洩の危険性もなく、また、新たに採血あるいは検査を行わないことから、危険性は想定されません。社会的利益として、本疾患の診断基準が作成されることにより正しい診断がなされ、現在治療法も確定していない疾患ですが、新たな治療法の開発を進めていくことが可能となると考えています。

また、この調査への協力の有無が、日常の診療において何らあなた、またはあなたが代理人となる患者さんの治療に影響するものではありません。この研究結果が論文や学会で発表される場合も、個人を特定できる情報は一切含まれませんので、個人情報が漏洩する危険はありません。

5.個人情報の保護

この調査の結果は、あなた、またはあなたが代理人となる患者さんと同じカルシフィラキシーの治療において、貴重な情報として用いられますが、あなた、またはあなたが代理人となる患者さんの個人情報に関することが公表されることはありません。皮膚の組織標本と種々のデータが院外の登録センターに送られますが、この場合も個人が特定可能な情報が全て除かれた状態で送られますので、個人情報が漏洩することはありません。解析後は、皮膚の組織標本の画像データを含む種々のデータは独自の患者番号が与えられて登録センターに保存されますが、保存時に、個人が特定可能な情報は全て除かれています。

6.研究計画書等の開示

研究計画書はご希望があれば、いつでもあなたに開示いたします。

7.協力者への結果の開示

全国から収集されたデータを解析後に作成される診断基準は、全国の透析施設に送付されますので、ご希望があれば、それについて担当医よりご説明いたします。しかし、個々の患者さんの病理標本や臨床検査データの解析結果については、登録センターでは、平成21年11月30日をもって、個人を特定できる情報が全て削除され、その後解析が行われますので、個々人についての解析結果を開示することは不可能です。

8.研究成果の公表

解析後、研究成果は学会などに公表され、診断基準は全国の透析施設に送付されますが、個人情報は解析前に全て削除されていますので、報告内容にも個人情報は一切含まれません。

9.研究から生じる知的財産権の帰属

本研究により生じる知的財産権は、研究組織に帰属します。

10.研究終了後の試料取扱の方針

研究終了後、登録されたデータは登録センターにおいて、全ての個人情報を削除したデータとして保存されます。

11.費用負担に関する事項

本研究の研究資金は全て厚生労働省科学研究費補助金より支払われます。協力してくれる方に対しての報酬等は支給されません。

12.問い合わせ先

この研究についての連絡先
研究代表者: 慶應義塾大学病院血液浄化・透析センター 林 松彦
TEL:03-5363-3908  FAX:03-5363-3908